服装2

 なぜ服装について上司は厳しくいうのでしょう。一番は安全面です。野丁場、つまりビルなどの工事は本当にあっさり死ぬのです。ちょっと作業着や軍手から糸がぴょんとでていただけで、グラインダーにひっかかり、体がずたずたになるなどということもあります。軍手禁止、八分禁止(幅が広いズボンのこと)が普通になっております。

 しかし、一般家庭の住宅工事だと、板金や塗装がほとんどで、そこまで高所の工事はないですし、グラインダーもめったに使いませんから、そこまで服装に対するこだわりが必要かな?という質問も受けます。動きやすければ、ネルシャツとジーンズでも別にいいんじゃない?アメリカの職人はその格好で仕事をしているよ、という質問がありましたので説明します。

 たしかに中高年向けのライフスタイル雑誌のライトニングや、DIY雑誌ドゥーパには、ネルシャツとジーンズのアメリカの大工スタイルで工事をやっている人がたくさん写真がのっています。たしかにアメリカンスタイルはかっこいいですよね。
 日本でも、BURTLEやEVENRIVERなどで、デザイン性の高い作業着を販売しており、そこそこ好評なようです。
 また、寅壱では、俳優の竹内力さんを起用して、男性の力強さを強調した不良っぽいデザインの作業着もあります。

 別に作業着は個人の自由だと思いますし、着る人がかっこいい作業着を着て、気分良く仕事できるなら、それでいいと私は思います。ただし、営業サイドが困ってしまうのです。
 普通の作業着で仕事をしていないと、お客様に「この会社は変な会社じゃない」と理解してもらうのに、手間がかかるのです。お客様はあなたがトヨタの販売店でプリウスを買うときのように、普通に接客してもらい、普通に工事をしてほしいのです。
 もしトヨタのセールスマンがホストのような極端に細身のスーツや、お笑い芸人の伊達みきおさんのようなスーツをきていたら、お客さんは「この販売店、大丈夫なの?」と思ってしまいますよね。売るときにセールスマンが「自分はこういう格好していますが、あくまでも服装は自分の趣味で、仕事はちゃんとします」の一言が必要になってしまいます。

 たとえ危険性の少ない職場であっても、個性のある作業着でお客様に違和感を与えてしまうと、「いや、うちの会社の職人は、こういう格好してるけど、仕事はちゃんとしますから」という営業の説明が必要になってしまうのです。そんな説明をいちいちするより、最初から普通の作業着を着てほしいというのが、会社の本音なのです。